七尾旅人『911FANTASIA』はよい

最近のでたものの中では、あるいは同世代の人がつくったものの中では類を見ない圧倒的な想像力と労力が注ぎ込まれているであろう傑作、七尾旅人『911FANTASIA』が(いまさらながら)やはりよいと僕は思うのでぜひみなさん聞かれてはどうかとお知らせ。七尾旅人は、ヘルニアを患ったあとのリハビリの散歩のときにセカンド(これも二枚組)をよく聴いていて親近感があったけど、そこからずいぶん「進化」したなあと思う。

ストーリーのある三枚組みで、知り合いのプログレ好きのおち君に言わせるなら、ゴドレイ&クレームの『ギズモファンタジア』にタイトルからして影響を受けているに違いないらしい(ただし、おち君は当時七尾のは未聴。僕はギズモ〜を未聴)。

時は2050年9月11日。「おじいちゃん」が、子供に昔話を聞かせる。そのお話は1969年、月面着陸と「民衆が立ち上がった」年から始まる。そのとき音楽は偉大な力を持っていた。2001年9月11日から幻とそれを原因とする戦火が広がっていく。そのときの子供たちは、「戦前世代」となっていた。すでに音楽は力を失い、享楽的になり、「欲望をちょいちょいと刺激する小さな装置でしかなかった」。そのとき「おじいちゃん」は「人間関係に悩んでいた」が、本気で音楽の力を信じようとする「こどものような」友人をみて、自分も「わずかに信じてきた」ソウル・ミュージックを聴いて、考え続け、「音楽はまだまだ闘える」と信じてみようと思うようになるが、、、といったあらすじ(ここまで半分か3分の一くらい)。

七尾旅人はブログで言っている。
「あどけなく、舌足らずなおじさんたち」への、「若い世代」からの「壮大な尻ぬぐいの始まりだ」と。



Tavito Nanao " 911 fantasia " Introduction Movie
http://jp.youtube.com/watch?v=awnUrCmkFNA

公式HP
http://www.tavito.net/

七尾旅人ブログ
http://tavito.seesaa.net/

公式HPでのまとめはこれ。

911ファンタジア、あらすじ】

「お話してよ!」
あの911から50年を経た、2051年9月11日の朝。
20世紀生まれのお爺ちゃんが
孫にせがまれて話し始める昔語り。
「じゃあ、お月様のお話をしよう」
1969、アポロ。人類初の有人月面探査船、着陸成功。
強烈なファンタジーによって世界を制した米国。
21世紀の到来。
2001年9月11日。
きたるもの。
拡大してゆく戦火。増殖する幻。変わりゆく世界、そして日本。
平和の国に、とうとう現れた、戦前世代たち。
地下音楽界、ソウルミュージックの再興と、進化。
さりゆくもの。 
消えてゆくレコード、魔法の輪っか。
敗北する音楽家たち。
沈黙。愛の日々。
「お爺ちゃん、もっとお話してよ!」
日の終わりに待ち受けるものは?