デヴィッド・グレーバーが来日しています。京都大学にも本日来る模様。いくかは迷い中。

Satellite Workshop 1
価値を生み出す創造力のゆくえ:価値の構築過程における行為と反照性の人類学
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/kyotosympo/j_program/index.html

Satellite Workshop 1
価値を生み出す創造力のゆくえ:価値の構築過程における行為と反照性の人類学
ローバル化がすすむ今日の世界では、ネオリベラリズムに代表される欧米的な価値観が、多様な価値のあり方を均質化してしまう危険性が叫ばれている。しかし、アジアやアフリカのフィールドでわれわれが目にするのは、こうした大きな潮流に対して受容や抵抗を超えた複雑な反応が生起しているという現実である。本企画では、ローカルな場で錯綜する複数の価値をめぐって、それを生み出す行為に注目することで、社会変容についての新たな理論構築を目指している。

われわれが取りあげる「価値」というテーマは、本企画に招聘するD・グレーバーが主著『人類学的な価値理論の構築に向けて』のなかで提起している問題である。彼は、「価値」とは、「ある行為が社会的全体に取り込まれるときに、その行為が意味づけられる過程である」ととらえている。社会には、ある行為の重要性を決める独自の価値が存在する一方で、その価値はさらに個々の行為によって反照的に再構築されていく。社会も、そして価値も、究極的には行為によってつくりだされるのである。

本企画では、D・グレーバーの価値理論を出発点として、贈与、分配、交換、商取引、土地所有などに関するミクロな交渉の事例を分析すると同時に、こうした行為およびそれをめぐる価値が、開発や民主化、グローバル宗教といったよりマクロなレベルの価値とどのような折衝を起こしているのかを検討する。

現実の社会では、ひとつひとつの行為に等しく意味が付与されることはめったにない。価値が可視化されるとき、そこには関与する人びとのあいだで、誰の創造力に高い評価を与えるかをめぐる葛藤や衝突が起きている。そして、しばしば価値は物神化されたかたちで可視化される。そこには創造力に対する評価を自明のものとして自然化させる権力が作用している。

われわれは、こうした錯綜する価値の問題にアプローチするために、複数の価値が拮抗や葛藤を繰り広げる場面の分析からはじめる。価値を生み出すさまざまな行為のあり方を分析することで、行為者の潜在的な創造力の可能性や価値が変容する契機に迫り、絶えざる行為の連続として社会を把握する新たな視点を拓いていきたい。